
風景に溶け込んだ泡と卵のガムランを求めて、僕は今日もラジオ・チューナーを回す。記憶と意識の裏側から発信されている透明な球体魚眼オーケストラは、見えないエネルギーの更に先にあって、波長の同調はとても難しい。僕は未だかつて誰も聞いたことのない秘密の周波数帯にダイアルを合わせ、風景に混ざった泡と卵のガムランを抽出する。なるべく雑音の少ない状態で。
風景の音は、近いようで懐かしい領域に浮遊し、その音は波(エネルギー)となって時間と空間を伝わっていく。聴覚は波と共鳴し、記憶の匂いに導かれて風景に深く浸透していく・・浸透していく・・。
球面哲学はオパールの絵画を構成し、涙色の原子核は幾何学図形を映し出す。そして、時間軸は緩やかに変化する。
永遠の位置を計る風はゆっくりと時を刻み、脳内に飛び交うソムニウムは時の速度に合わせて静かに広がり始める。刹那に蒸気幻楽の古い青が冴え渡り、広大な海の映像となって足もとを埋める。
バルサミコ酢は鍋の中で化学反応を起こし、ソムニウムの色は深い緑色に変化する。やがて風景は古代響と和し、ラジオ・チューナーからは透明な球体魚眼オーケストラが大音量で開濫する。音の輪郭は匂いとなって肺と網膜の裏側に届き、音楽は身体を通って循環していく・・循環していく・・。
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