この前、友人達と会った時のこと。そのうちの一人がミャンマーからの留学生なので、そういえばと思い、「なんで仏像がぺかぺか光ったりするのか?」ということを質問してみた。すると、「仏様はオーラを出してるから光ってるんだよ」と言う。仏像の後ろで広がる光「後光」をとって「後光効果(ハロー効果)」という言葉があるように、不可視なものの可視化による心理的効果を狙った演出法がテクノロジーを利用した様式として定着している、ということが背景にあるように感じた。
そんなことを話していたら友人が「そういえばドイツの美術学の言葉に”キッチュ”ってのがあるじゃない。君が電飾に興味を持つのは意外なマリアージュがもたらす驚きと美的価値によるものなんじゃないか!?」というようなことを言って来た。もう少し詳しく知りたかったので、ネットで「キッチュ」の意味を調べてみた。
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出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『キッチュ(kitsch)とは、美学・芸術学において、一見、俗悪、異様なもの、毒々しいもの、下手物などの事物に認められる美的価値である。元はドイツ語だが、英語でも同じ綴りで浸透している。キッチュは、芸術作品や、複製技術の発達した近代・現代の、大量生産された工芸品などに見いだせることがある。芸術の中では、サルバドール・ダリのいくつかの作品をキッチュと呼べる。またシンガポールのハウ・パー・ヴィラ(タイガーバームガーデン)は、典型的なキッチュの例として知られている。
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キッチュとは、「見る者」が見たこともない異様なものか、「意外な組み合わせ」「ありえない組み合わせ」であろう。もしくは、「見る者」にとって異文化に属するものであったり、時代を隔てたりしている必要がある。
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キッチュは、単にグロテスクなだけでは成立しない。ヒエロニムス・ボッシュの絵画や東アジアの地獄絵のように、過剰な表現、意外な組み合わせから一種の滑稽さが現れることがあるが、それは必ずしも制作者の意図とはかぎらない。むしろ、制作者の意図は真剣そのものであり、キッチュとみなされるのが不本意かもしれない。だが、キッチュは最終的には「見る者」が感じる美的価値である。つまり、キッチュは表現者による、意図的・積極的な表現手法であることもあるが、「意図しないキッチュ」「見方としてのキッチュ」もある。』
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なーるほど。そういうことかあ。「一見俗悪なものにも美的価値がある」という考え方と、「意外な組み合わせには美的価値がある」という2つの考え方が「キッチュ」には内包されているみたいだ。有名な言葉で「アイデアとは、既存のものとものの新しい組み合わせである。」というのがあるけど、既存のもの同士の新しい関係性の発見(発明)には、今までにない感覚を生む力があるのだろうか。
そういえばカツカレーは出て来た当時は意外な組み合わせだったという話を聞いたことがある。(最近では納豆カレーもあるみたい。)当時の人でなくても、例えばビーフカレーライスはインドの人から見たら異様なコラボレーションに映る気がする。ネパールからやって来たヒンドゥー教徒の友人もカレー屋のビーフカレーの広告を見るとよく「あんなものはカレーへの冒涜だ!!」とか異常な反応を示していた。
そうした相対的に異様だと感じるものに対する好奇心と興味深さというものが、僕の東南アジアで見た様々な事物に対する四次元的魅惑の根源にあるのかもしれない。
ついでにシンガポールのハウ・パー・ヴィラが「典型的なキッチュ」だと記されているので見てみる。
なんのこっちゃ。カオダイ教といい、ココナツ教といい、この寺院といい、見ていると文化相対主義の観点とオリエンタリズムの観点が脳内で激しくぶつかり合う。
これを「俗悪だけど美だよね」と見るのはサイードの言う「オリエンタリズム」という西洋中心主義的な発想形態に染まっているからなのだろうか。うーむ。しかし、自分の住む日常から世界とは異なる現実を見た瞬間に、逆に自らの日常と常識を相対化する視点がそこに立ち現れるという見方もできる。或は、レヴィ=ストロースさんが「どんなに均質化しても、その中には多様性が必ず生まれる。」と言うように、これらの現象はマクロなグローバリゼーションという均質化の流れの中でミクロに起きている文化コラージュともいうべき意外な組み合わせによる多様性の表出の一例なのかもしれない。・・と色々考えてしまうほど、沢山の四次元とキチュティック・ファンタジーが満ち溢れているこの世界。超現実世界。
最近こういう本を見つけた。読んでみたいかも。むーにょ。後者には「キッチュ批判」の観点も述べられているみたい。
・『東南アジア四次元日記』(著:宮田珠己/出版:旅行人,1997)
・『ユリイカ臨時増刊悪趣味大全』(青土社, 1995)
1 comment:
希望大家都會非常非常幸福美滿快樂健康美麗更希大家活力無限........................
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